つらくなって仕事を辞める時の101
この記事は、1年以上勤めた会社を病気やケガで退職した後、働く意思があり、 単独世帯 の60歳未満の人に向けた記事で、税金、保険、再就職に関する行政手続きについて説明します。
免責事項
この記事は私自身が調べた知識や経験に基づいた情報提供のためのものであり、不正行為の促進や不正受給の援助を目的としたものではありません。また正確性や適切性を保証するものではありません。そのため、各情報提供元の説明を自分で確認し、自己責任で判断してください。
なおこの記事を利用して直接的または間接的に生じた問題や損害について、私は一切の責任を負いません。さらに、私は無資格者のため、この記事は専門家の助言に代わるものではありません。
退職日の翌日から、次の6つの手続きを行ないます。それぞれの手続き(届出や申請)の名称と、どのような書類が必要で、いつまでに手続きを完了する必要があるかを説明します。
No. | 手続き名称 |
---|---|
1 | 国民年金の加入手続き |
2 | 国民年金保険料の失業による特例免除申請 |
3 | 国民健康保険の加入手続き |
4 | 国民健康保険料・保険税の減免申請 |
5 | 雇用保険の基本手当の受給資格の決定手続き |
6 | 健康保険の傷病手当金支給申請 |
1. 国民年金の加入手続き(届出)
厚生年金保険から国民年金の第1号被保険者に加入する手続です。 国民年金に加入するための手続き|日本年金機構 を参考にすると、提出期限と必要書類は次のとおりです。
項目 | 説明 |
---|---|
提出場所 | 住所地の市区役所または町村役場 |
提出期限 | 退職日の翌日(資格喪失日)から14日以内 |
必要書類など | マイナンバーカード(本人確認のため) 年金手帳(基礎年金番号のため) 健康保険被保険者資格喪失証明書(厚生年金保険の資格喪失日のため) |
2. 国民年金保険料の失業による特例免除手続き(申請)
国民年金保険料 の 免除制度 を利用申請する手続です。 ただし、免除申請が承認されると全額納付した場合と比べて年金額が低額になります(追納すれば老齢基礎年金の受給額を満額に近づけることも可能です)。
項目 | 説明 |
---|---|
提出場所 | 住所地の市区役所または町村役場 |
提出期限 | 離職票が届いたらすぐに |
必要書類など | マイナンバーカード(本人確認のため) 年金手帳(基礎年金番号のため) 雇用保険被保険者離職票(失業した事実を確認するため) |
免除申請する年度は、退職日の翌日が属する月の年度(7月から翌年6月を区切りとする1年間)を選ぶことになります。 免除申請が承認された場合、翌年度も免除を自動継続できます。詳細は こちらの注意点 を参照ください。
3. 国民健康保険の加入手続き(届出)
健康保険制度の国民健康保険に加入する手続です。 会社を退職するとき | 全国健康保険協会 や 転職・退職したときの手続き|日本年金機構 にあるとおり、健康保険任意継続も選択肢としてありますが、後述の国民健康保険料・保険税の減免を受ける予定であれば国民健康保険に加入する必要があります。
国民健康保険の加入資格 や 国民健康保険制度|国民健康保険中央会 を参考にすると、提出期限と必要書類は次のとおりです。
項目 | 説明 |
---|---|
提出場所 | 住所地の市区役所または町村役場 |
提出期限 | 退職日の翌日(資格喪失日)から14日以内 |
必要書類など | マイナンバーカード(本人確認のため) 健康保険被保険者資格喪失証明書 |
資格喪失日より前の届出(事前受付)は手続き窓口に確認が必要です。
4. 国民健康保険料・保険税の減免手続き(申請)
国民健康保険の保険料・保険税 の減免制度を利用申請する手続です。下記の表は参考程度であり、詳しい情報はお住まいの自治体の国民健康保険窓口に問い合わせる必要があります。
項目 | 説明 |
---|---|
提出場所 | 住所地の市区役所または町村役場 |
提出期限 | 雇用保険の受給資格が認定されたらすぐに |
必要書類など | 国民健康保険被保険者証(申請書に番号と枝番が必要であるため) マイナンバーカード(本人確認のため) 雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知 |
国民健康保険法施行令には次のように規定されています。
出典「国民健康保険法施行令 | e-Gov法令検索」より抜粋
(特例対象被保険者等に係る特例)
第二十九条の七の二 2 前項に規定する特例対象被保険者等とは、都道府県が当該都道府県内の市町村とともに行う国民健康保険の被保険者又は特定同一世帯所属者のうち次の各号のいずれかに該当する者(これらの者の雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第十四条第二項第一号に規定する受給資格(以下この項において「受給資格」という。)に係る同法第四条第二項に規定する離職の日の翌日の属する年度の翌年度の末日までの間にある者に限る。)をいう。
一 雇用保険法第二十三条第二項に規定する特定受給資格者
二 雇用保険法第十三条第三項に規定する特定理由離職者であつて受給資格を有するもの
上記のとおり、非自発的失業者(特定受給資格者または特定理由離職者)でかつ、雇用保険の受給資格を有することを証明できれば、退職日の翌日が属する会計年度の翌年度末日まで、特例対象被保険者等の適用が受けられると考えられます。より具体的な条件としては次のとおりです。
出典「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当) - 厚生労働省」より抜粋
Q22 国民健康保険料(税)の軽減措置はどのような場合に受けられるのでしょうか。
国民健康保険料(税)の軽減措置は、倒産や解雇などによる離職(特定受給資格者)や、雇い止めなどによる離職(特定理由離職者)された方が受けることができます。
具体的には、雇用保険(基本手当)の受給手続後、住居所を管轄するハローワークから交付する雇用保険受給資格者証の12欄「離職理由」が、11,12,21,22,23,31,32,33,34と記載がある方が対象です。
国民健康保険料(税)の軽減措置について、詳しくは、市町村の国民健康保険担当にお問い合わせください。
5. 雇用保険の基本手当の受給資格の決定手続き(申請)
公共職業安定所で 雇用保険の失業等給付金における求職者給付の一般被保険者に対する基本手当 の受給資格の決定手続きです。 (求職者の方へ) - 離職されたみなさまへ - 厚生労働省 や ハローワークインターネットサービス - 基本手当について で説明されている受給要件や必要書類をまとめると次の要点になります。
受給要件(参考程度)
- 働いていないこと(賃金をもらっていない場合でも)
- 求職者登録をして、求職の申し込みをしていること
- 就職しようとする積極的な意思があること
- いつでも・すぐに就職できる能力(健康状態や家庭環境など)があること
提出期限と必要書類
項目 | 説明 |
---|---|
提出場所 | 住居所を管轄する公共職業安定所(ハローワーク) |
提出期限 | 離職票が届いたらすぐに |
必要書類など | 雇用保険被保険者離職票(-1、2) 症状の安定性および就職の可能性の証明書 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード マイナンバーカード(個人番号や本人確認のため) 求職者マイページアカウント登録 を事前に 求職登録完了 した場合はその旨を伝える |
幅広に雇用保険制度を知るには 雇用保険制度研究会|厚生労働省 の資料を参照するのがお勧めです。
症状の安定性および就職の可能性の証明書
病気やケガで退職した場合は、前述の受給要件の4に非該当となるかと思います。非該当の場合は「症状の安定性および就職の可能性の証明書」を提出し、受給要件の4に該当する証明が必要です(いったんは 50203(3)離職票提出者に労働の意思又は能力がない場合の措置 | 雇用保険に関する業務取扱要領 として扱われるか、あまり想定はできませんが未受理になるかもしれません)。
具体的には公共職業安定所で文書名「就労可否証明書」や「病状証明書」といった書類を入手します。 様式(標準的な書式)は定まっておらず、主に次のような記入欄があります。
- 証明日(記入日)
- 証明日の翌日以降は週20時間以上の就労が可能か?
- 健康保険の傷病手当金などを受けているか?その受給申請は継続するか?
- 退職時は仕事を続けることが困難であったか?
もし、証明書の日付の翌日以降に再就職が難しい場合は、受給期間延長制度がある旨の説明があるはずです。
離職理由に異議がある場合
ハローワークインターネットサービス - 雇用保険の具体的な手続き や 50006(6)離職票の記載内容に係る異議の有無の確認 | 雇用保険に関する業務取扱要領 にあるとおり、離職理由の事情伺いの機会があります。異議がある場合は客観的な説明ができる資料(医師の診断書や残業時間の記載がある勤務実績表)を提出し、いったんは 50202(2)受給資格の仮決定 | 雇用保険に関する業務取扱要領 という扱いになります。
その後は 50007(7)離職票受理の安定所と離職票交付の安定所との連絡 | 雇用保険に関する業務取扱要領 にあるとおり、離職票を交付した安定所は、原則として初回の認定日までに離職理由を判断し、可能な限り速やかに事実調査することになっています。
最終的には 50102(2)受給資格の決定 | 雇用保険に関する業務取扱要領 にあるとおり、離職票を受理した公共職業安定所で受給資格の認定または否認がされます。
特定受給資格者および特定理由離職者
50306(6) 特定理由離職者及び特定受給資格者の決定手続 | 雇用保険に関する業務取扱要領 や ハローワークインターネットサービス - 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要 や 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準 にあるとおり、自己都合退職者の場合でも、離職理由によっては給付制限なしになる場合があります。
具体的な判断基準は次のとおりです。
- 特定受給資格者
- 50305(5)特定受給資格者の範囲 にある基準の該当または非該当で判断可能です。
- 特定理由離職者
- 50305-2 (5-2) 特定理由離職者の範囲 にある基準を用いて具体的事情によって個々に決定されます。
- 雇用保険法 第四条(基本手当の支給に関する暫定措置) にあるとおり 厚生労働省法令 で定める者に該当または非該当で判断可能です。
雇用保険の審査請求制度
受給資格の否認や給付制限における離職理由の判定(特定理由離職者または特定受給資格者に該当するか非該当か・正当な理由のある自己都合退職か・自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇か)にあたっては 50203(3)離職票提出者に労働の意思又は能力がない場合の措置 | 雇用保険に関する業務取扱要領 や 50308(8)所定給付日数の決定に伴う事務処理 にあるとおり、認定日の翌日から3か月以内に労働局(厚生労働省の地方支分部局)の雇用保険審査官に対して審査請求できます。具体的には 総務省|行政管理局が所管する行政手続・行政不服申立てに関する法律等|行政不服審査法 にありますが、要点としては下記のとおりです。
出典「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当) - 厚生労働省」より抜粋
Q46 ハローワークの離職理由の決定処分について、不服がある場合に、どのようにしたらよいでしょうか。
ハローワークの離職理由の判定に対して不服がある場合には、処分を行ったハローワークを管轄する都道府県労働局の雇用保険審査官に対して、処分のあったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に審査請求(不服の申し立て)を行うことが可能です。
具体的には、次のとおりです。
1.ハローワークの離職理由「所定給付日数の決定」(「特定受給資格者に該当するか否か」)の判定に不服がある場合には、「基本手当が支給終了となった認定日」の翌日から起算して3か月以内
2.ハローワークの離職理由「給付制限に該当するか否か」の判定に不服がある場合には、「○月○日から○月○日まで○日間は基本手当を支給しない。」旨の処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内なお、審査請求は文書又は口頭で、直接雇用保険審査官又は処分を行ったハローワークもしくは請求者の住居所を管轄するハローワークを経由して行うことが可能です(審査請求を文書で請求する際は郵送で行うことも可能です。)。
具体的な請求方法等につきましては、雇用保険審査官等にお問い合わせください。詳しくはこちら( https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000190211.pdf )[161KB]をご覧ください。
また離職理由の判定通知は受給資格通知に印字される「理由」の番号により通知されます(雇用保険法施行規則等の一部を改正する省 令案概要 - 厚生労働省)。
6. 健康保険の傷病手当金支給手続き(申請)
業務外の事由による病気やケガで会社を休んだときは 健康保険の傷病手当金を申請 していると思われます。
退職日の翌日以降(資格喪失後)の継続給付も健康保険被保険者証の記号と番号が必要になります。 そのため、会社へ返却する前に健康保険被保険者証を控えておくか、健康保険被保険者資格喪失証明書の複写を取っておくことが望ましいでしょう。
市区役所または町村役場と公共職業安定所での手続きをスムーズにする手順
上記の手続きにおいては、提出する場所によって別機関による発行書類(退職時に入手する書類以外)が必要になるため、状態遷移としては下図(SVGなので拡大縮小可)に示した手順がもっと迅速な方法であると思われます。
Mermaid Live Editor で閲覧するには次のテキストを使用してください。
Mermaid Live Editor: https://mermaid.live/
---
title: 【図】雇用保険の基本手当受給資格決定までの最短手順
---
stateDiagram-v2
[*] --> 退職日の翌日
state after_retirement <<join>>
退職日の翌日 --> after_retirement
after_retirement --> first_visit_hellowork
after_retirement --> 国民年金の加入
after_retirement --> 国民健康保険の加入
after_retirement --> 離職票を入手する
国民健康保険料・保険税の減免 --> [*]
国民年金保険料の失業による特例免除 --> [*]
雇用保険説明会 --> [*]
state 市区役所または町村役場 {
state retirement_letter <<join>>
国民年金の加入 --> retirement_letter
離職票を入手する --> retirement_letter
retirement_letter --> 国民年金保険料の失業による特例免除
state eligibility_card <<join>>
国民健康保険の加入 --> eligibility_card
受給資格通知 --> eligibility_card
eligibility_card --> 国民健康保険料・保険税の減免
note left of 国民健康保険料・保険税の減免: 離職理由コードが 11,12,21,22,23,31,32,33,34 のとき対象
}
state health_insurance_card <<join>>
国民健康保険の加入 --> health_insurance_card
first_visit_hellowork --> health_insurance_card
note left of health_insurance_card : 国民健康保険被保険者証を入手する
state 医療機関 {
hospital: 症状の安定性および就職の可能性の証明書の記入依頼
健康保険の傷病手当金支給申請の記入依頼
}
health_insurance_card --> hospital
hospital --> submit_certificate
state 公共職業安定所 {
first_visit_hellowork: 症状の安定性および就職の可能性の証明書を入手する
離職票を入手する --> submit_letter
state submit <<join>>
submit --> request_letter_correction_choice
request_letter_correction_choice: 離職理由の異議
submit_certificate --> submit
submit_certificate: 症状の安定性および就職の可能性の証明書の提出
submit_letter --> submit
submit_letter: 離職票の提出
note left of submit: 求職者マイページアカウント登録を事前に求職登録完了しておくと待ち時間が減ります
state request_optional <<choice>>
request_letter_correction_choice --> request_optional
request_optional --> request: なし
request_optional --> 事情伺い: あり
note left of 事情伺い: 医師の診断書や残業時間の記載がある勤務実績表を提出する
request: 受給資格の審査
事情伺い --> wip
wip: 受給資格の仮決定
wip --> request
accept: 受給資格および給付制限処分の決定
accept --> 受給資格通知
reject: 受給資格不該当処分
state response <<choice>>
request --> response
response --> accept: 認定
response --> reject: 否認
note left of response: 給付制限における離職理由の判定
note left of reject
【処分理由の例】
労働の能力なし
労働の意思なし(学生に該当など)
就職状態
受給期間経過(第20条不該当)
被保険者期間不足(第13条不該当)
end note
state request_examination <<choice>>
reject --> request_examination
request_examination --> 審査請求: 不服あり
request_examination --> 受給期間延長制度などの手続き: 不服なし
note left of request_examination
【審査請求の例】
所定給付日数の決定判定(特定理由離職者または特定受給資格者に該当するか否か)
給付制限の決定判定(正当な理由のある自己都合退職か否か)
end note
}
公共職業安定所 --> 雇用保険説明会